多くの引越し業者は国土交通省の「標準引越運送約款」に基づいて業務を行っています。そこでは、見積もりの金額以上の額が掛かって請求することができる場合として「荷送人の責任による事由により見積運賃等の算出の基礎に変化が生じたときに限り」ということが書かれています。つまり業者の一方的な見積もりのミスや勝手なサービス追加によって見積もり以上の額を請求された場合には支払わなくてもいい、ということになるでしょう。
これはよく聞くトラブルの一つです。先にご紹介した約款では「自己又は使用人その他運送のために使用した者が、荷物の荷造り、受取、引渡し、保管又は運送に関し注意を怠らなかったことを証明しない限り、荷物その他のものの滅失、き損又は遅延につき損害賠償の責任を負い、速やかに賠償します」との記載があります。つまり、引越し業者が「自分たちは必要な注意を払っており、家具がキズついたのは自分たちの責任ではない」ということを証明しない限り、賠償責任を負うということになります。これは業者にとっては厳しい規定になっておりますが、消費者側にしてみればとても心強い規定ですね。
この約款をみてみますと、他にも「見積料を請求しない」や「内金・手付金は請求しない」というような規定もあります。見積時にこの約款を提示することになっていますので、消費者側もしっかりと目を通しておく必要があるでしょう。
訪問販売で契約をした場合、「クーリングオフ期間が8日間」というのはよく知られています。しかし、8日間以内であっても、すでに工事が終わってしまった場合、またはすでに着手してしまった場合はクーリングオフができない、と思っている方が多いかと思います。さらには、「ダメもとで」と解約したい旨業者に伝えても、今回のご相談のように「工事が終わってるから」との理由で解約に応じない業者も実在します。
では、法律上はどうなっているのでしょうか。特定商取引法を見てみますと「申込者等の土地又は建物・・・・の現状が変更されたときには・・・・販売業者に対し、その原状回復に必要な措置を無償で講ずることを請求することができる。」となっています。
つまり、工事に着手したとしても、工事が終わってしまっていたとしても、クーリングオフ期間内である8日間は申込者の一方的な意思表示で解約ができ、原状回復も無償でするよう請求できます。今回のケースでは、取り付けた換気扇は業者負担で取り外し、元通りにしてもらえる、ということになります。このクーリングオフの通知、必ず「書面」で行ってください。内容証明が安全です。
ただ、なんでもかんでも8日以内で解約できると考え、安易に「契約・解約」を繰り返すような権利の濫用はやめましょう。
このような場合は原則契約書を受け取った日から8日以内なら無条件に解約が出来ます。内容証明で解約したい旨を書いて末尾に通知人と被通知人の住所と氏名を正確に書いて印を押します。3部作成して相手の住所を記入した封筒に切手を貼り最寄りの郵便局で担当者に聞きながら提出してください。料金は2,000円程度です。
書面の形式は縦書きでも横書きでもかまいませんし、大きさにも規定はありませんが最近ではA4版の横書きが多くなってきています。余計な理由などは必要ありませんので解約したいという意思だけをハッキリと書いてください。ローン契約をしている場合には同時にローン会社にも内容証明で本契約をクーリングオフにより解約した旨を通知し支払を止めてもらう必要があります。
とにかく世の中にはそんなにうまい話は100%ありませんし、おかしいなと思う契約書には絶対に判を押さないことが大切です。